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自然放射線

放射線は人工由来の物だけでなく自然由来のものも存在しており、一般的に自然放射線と呼んでいます。よく誤解されることですが、自然由来だからといって人体に対する影響が全く無いわけではありません。自然放射線であっても単純に強度が高くなったり、通常とは異なる当たり方をしたりすれば、それらの影響はがんの発生確率の上昇といった形となって人体への健康被害として現れます。

私たちの身の回りにある自然放射線には宇宙線・環境γ線・吸入被曝・摂取被曝の4種類が存在しています。

①宇宙線

地球には様々な高エネルギー荷電粒子が常に飛来しています。その多くは太陽で発生したものであり、太陽系外起源のものもあります。飛んでくる荷電粒子の種類は多種多様であり、その大部分を陽子(水素原子核)が占めていますが、ヘリウムから鉄までの原子核が飛来することもあります。これらを総称して一次宇宙線と言います。

一次宇宙線は地球の大気圏上空で窒素や酸素の原子核と衝突して複雑な反応を起こし、最終的にはμ粒子(μとμという荷電粒子を発生させます。電荷を持ったμ粒子は様々な初速度を持っており、遅いμ粒子はすぐさま空気中で崩壊して電子に崩壊し、速いμ粒子はそのまま地上にまで到達します。結果として地上に観測できるμ粒子は1mの鉄を通過できるほどの高エネルギーなものばかりとなります。このような電荷と高いエネルギーを持ったμ粒子が地表1m2の範囲に1秒当たり1,000個ほど降り注いでいます。これが地表で観測される二次宇宙線であり、地上で暮らす人々に影響を与える宇宙線の大部分はこの二次宇宙線によるものとなります。

霧箱で可視化した宇宙線(赤線枠内)

二次宇宙線による被曝の影響はさらに直接電離及び光子成分中性子成分宇宙線生成放射性核種の3種類に分けることが出来ます。

宇宙線μ粒子が空気原子中の電子の近傍を通ると、クーロン力で電子が飛び出します。電子が原子核のそばを通って加速度運動をすると高エネルギーの光子が発生します。これはスマホから電波が出る反応と同じで、電磁気学で簡単に説明できます。光子が原子核のそばを通ると電子と陽電子が対生成されます。この電子または陽電子が原子核のそばを通ると光子が生まれ、光子が原子核のそばを通ると電子と陽電子が対生成されます。宇宙線の直接電離及び光子成分とはこの繰り返しによって発生するものであり、初めは高エネルギーのμ粒子1個でも空気を通っている間に電子陽電子と光子に囲まれていきます。これを電磁シャワーと言います。

μ粒子が原子核に衝突すると、だるま落としのように、陽子または中性子が1個飛び出すことがあります。陽子は電荷を持っているため空気の中を走れる距離は短いのですが、電荷の無い中性子は地上まで降ってくることができます。これが宇宙線の中性子成分です。

μ粒子が原子核の中心付近に衝突すると原子核を破壊することがあり、この破壊で生じた放射性原子核が地上に降ってから放射線を出すことがあります。これが宇宙線生成放射性核種となります。

宇宙線による被曝の評価は1990年頃まで直接電離及び光子成分のみを対象にしか行われておらず、人口1億人あたり毎年1,500人が宇宙線由来のがんで死亡すると評価されていました。現在の評価では直接電離及び光子成分によるものが人口1億人あたり毎年1,400人、中性子成分によるものが毎年500人、宇宙線生成放射性核種によるものが毎年50人と、合計で人口1億人あたり毎年1,950人の方が宇宙線由来のがんによって死亡すると評価されています

宇宙線は空気による遮蔽効果を受けるため、高度が高くなればなるほど人体への影響が大きくなり、標高2,000mで地上の2倍程度になります。

そのことから宇宙飛行士や航空機の国際線乗務員といった宇宙線強度の高い空間を長時間過ごす職業の人にとって、宇宙線は特に注意すべき自然放射線であると言えます。

②環境γ線

環境γ線は私たちの身の回りに存在している大地や建物の建材に含まれている放射性物質から放たれているγ線です。かつては外部大地放出γ線とも呼ばれており、地中の花崗岩などに含まれている放射性物質からのγ線によって人口1億人あたり毎年350人ががんで死亡すると評価されていました。ところが水溶性の放射性物質であるトリウム232が石灰石やコンクリートに含まれていることが判明し、環境γ線による推定被曝量は大幅に増えたという過去があります。

トリウム232はウラン系列と同様に次から次へと放射線を出しながら崩壊を繰り返す特徴(トリウム系列)があり、その最後の過程でタリウム208という物質がβ崩壊を起こして安定原子核である鉛208に変わるときに自然界最大エネルギーを持つγ線を放出します。すなわちコンクリート建造物の中にいると、床・天井・壁からタリウム208の出すγ線に晒されて外部被曝を引き起こしてしまうのです。

現在の環境γ線に対する評価では、一日4時間外出し20時間はコンクリート建造物の中にいる人を想定すると、人口1億人あたり毎年2,100人ががんで死亡すると言われています。

日本の木造住宅は湿気による材木の腐食対策とシロアリ対策で、建物の床一面にコンクリートのべた基礎を引くのが一般です。日本の標準的な木造住宅に住みコンクリートの職場で働く人は人口1億人あたり毎年1,500人、木造住宅に住み農業や漁業などコンクリートで覆われていない職場で働く人は毎年1,000人程度の割合でがんによって死亡していると試算できます。

③吸入被曝

吸入被曝は私たちの身の回りの空気に含まれている天然由来の放射性物質を呼吸によって体内に取り込むことによって起きるものです。その大部分は地球内部から湧き出てくるラドンと呼ばれる無色無臭の不活性ガスとその崩壊生成核種が占めており、特に呼吸器系のがんの発生に影響を及ぼします。

ラドンに対する1990年頃までの評価では人口1億人あたり毎年1,500人程度の方ががんによって死亡すると考えれていましたが、2008年に行われた国際会議で世界中の鉱山内部ラドン濃度と鉱山労働者の肺がん死者数を精密に調査したところ、人口1億人あたり毎年6,300人もの方がラドン由来のがんで亡くなっていると評価されるようになりました。その内訳は、ラドン222によるもの毎年5,750人、ラドン220によるものが毎年500人、ラドンの崩壊生成核種の吸引摂取によるものが毎年50人とされています。

ラドンについての話題は本ホームページの主幹を成しており、日本国内のおけるラドンへの認識や評価が国際社会と比較して完全に誤ったものになっていると弊社は考えています。詳しい解説は下記のページにて行っておりますので、よろしければそちらをご覧ください。

④摂取被曝

摂取被曝は飲食物に含まれていた放射性物質を経口摂取することによって胃や消化器官を被曝させてしまうことです。その大部分はカリウム40ポロニウム210によるものが占めているとされています。カリウム40は地球が誕生したときに組み込まれた放射性物質であり、半減期が約12.5憶年と比較的長いことから天然のカリウム中に必ず含まれています。対してポロニウム210はラドン222や鉛210と同様にウラン系列に属している放射性物質であり、空気中のラドン222を通じて海底や川底に沈殿して鉛210から発生するため、海産物に含まれてい存在しています。特に貝類などの海底の砂から食糧を漉し取る生物の消化器官に高濃度で含まれています。

摂取被曝による影響は世界平均でカリウム40によるものが人口1億人あたりがん死者数が毎年850人、ポロニウム210による摂取被曝は毎年600人と言われています。日本人のポロニウム210摂取量に関する研究は数多く存在し、その摂取量の多さから日本人における人口1億人あたりのポロニウム210によるがん死者数予想値は1,000人から5,000人の範囲で広がっています。

また弊社はこれよりも遥かに多くの日本人が飲食物中の放射性物質が原因で胃がんや大腸がんなどで亡くなっていると考えています。詳しい解説は下記のページにて行っておりますので、よろしければそちらをご覧ください。

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