UNSCEAR2008の報告を受けてWorld Health Organization(国連世界保険機構)では2009年9月に「人の立ち入る建物の室内ラドン濃度を測定し、その値がが100Bq/m3(外界のおよそ4.5倍)を超える場所がある建物はすぐに対策を講じよ」という勧告を各国政府に出しました。この値での年間被曝量は約5mSvです。そしてこの100Bq/m3がすぐに実現できない国は300Bq/m3以下で出来るだけ低い暫定規制値を設定するように各国に求めています。
参照:
WHO handbook on indoor radon: a public health perspective
WHO 屋内ラドンハンドブック(日本語訳・PDFファイル)
WHOの勧告を受けて世界各国ではそれぞれに対策に乗り出しています。
例えば米国ではEnvironmental Protection Agency(EPA:米国環境保護庁)が2006年から建築業者を集めてラドン濃度の測定方法と室内ラドン濃度を下げる対策工事例の講習会を開催しており、受講業者はラドン対策の可能な業者として各州の保健局のホームページで公開されています。最近では2020年1月に「Prevent Lung Cancer: Test Your Home for Radon(肺がん予防のため自宅のラドンを測ろう)」という呼びかけを全国民に出しており、全ての住宅(学校や託児施設も含む)にラドン測定器を配布し、毎年1月をNational Radon Action Month(国民ラドン対策月間)として自宅のラドン濃度の測定を推奨しています。そしてラドン濃度が外界の3~6倍ならば対策工事を検討し、6倍以上ならすぐに対策をとるように訴えています。EPAのホームページには様々なラドン対策工事例が紹介されています。DIYのお店で材料だけを購入して工事は自分で行うものから、空調方法を本格的に改造するものまでありますが、平均工事費は1,000ドル程度だそうです。
英国でもPubulic Health England (イングランド公衆衛生局・現英国保険安全保障庁:UK Health Security Agency)がUK National Radon Action Planを発表し、全ての家主に最新のラドンマップを使用して彼らの家がラドン影響地域にあるかどうかを確認するよう勧告し、全ての職場はラドンを含むリスクアセスメントを実施するよう推奨しています。そして年間ラドン濃度が200Bq/m3以上の場合には、低減対策を行うよう促しています。
カナダでもHealth Canada(カナダ保健省がラドン)が「Radon is an invisible Radioactive Gas that causes lung cancer(ラドンは目に見えない放射性ガスであり、それが肺がんの原因となる」という標題を掲げて、1日4時間以上占有される空間を持つあらゆる建物(職場、公共施設、住宅を含む)でのラドン濃度測定を推奨し、200Bq/m3を超える新築および既存の住宅を含むすべての建物へラドン対策を行う指導を行っています。
以上のように欧米主要国ではWHOの勧告に基づきラドン対策を行っており、麻薬問題もありますが欧米の肺がん死者は着実に減少へ転じています。
しかし日本では、各国政府のようにラドンの危険性を周知することや各建物でのラドン濃度測定を推奨することが満足に行われているとは言えません。
国連加盟国であれば行わなければならないにも関わらず、です。
参照:
米国環境保護庁
Radon
Prevent Lung Cancer by Testing your Home for Radon, EPA Recommends
EPA Encourages Home Testing During National Radon Action Month
イングランド公衆衛生局(現英国保険安全保障庁)
UK National Radon Action Plan
UKradon
カナダ保健省
Take Action on Radon