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放射性物質から飛び出してくる放射線の種類

放射性原子核から飛び出してくる「かけら」である放射線にはα(アルファ)線β(ベータ)線γ(ガンマ)線の3種類があります。

①α線

α線の正体はヘリウム4の原子核です。陽子数も中性子数も2であるヘリウム4は極めて安定な原子核であり、ウランやトリウムのような鉛より重い不安定原子核の大部分は崩壊反応の最初にヘリウム4の原子核を放出します。歴史的に最初に発見された放射線あることから、ギリシャ文字の最初の文字である「α」が当てはめられ、α線を出す崩壊のことをα崩壊と呼んでいます。

α線の正体はヘリウム原子核(陽子2個、中性子2個)

主に鉛よりも重い不安定原子核で発生。透過力が非常に弱い反面、狭い範囲に大量のエネルギーを落とします。

α線は透過性が非常に弱くて紙1枚で遮蔽できる反面、衝突したときに短い範囲(水の場合50μm程度)に全てのエネルギーを落としてしまうため、α線が直接生物の細胞(人の細胞の平均サイズは20μm)に直接当たると、同じエネルギーを持つ他の放射線と比べて20倍の確率でがんを発生させてしまいます。

主なα線源はラドン222、ウラン238、アメリシウム241などです。ラドン222は本ホームページではメインに取り扱われおり、天然由来で空気中に存在している、私たちの生活の中で最も身近な放射性物質の1つだと言えます。

②β線

β線の正体は電子または陽電子です。陽電子は電子と同じ質量で逆の電荷を持つ反粒子と呼ばれるもので、電子はマイナスの電荷を帯びているのに対し陽電子はプラスの電荷を帯びています。特に断りが無ければβ線とは電子の方を指しますが、区別したいときは電子をβとし、陽電子をβと表記します。

・β崩壊

β線は中性子過剰核で発生します。

軽い原子核では陽子数と中性子数が等しいか少し中性子が多いものが安定しますが、原子核が大きくなると陽子間の反発力が増大して不安定になり、中性子が陽子よりかなり多い原子核が安定になります。しかし中性子が多ければ多いほど原子核が安定するわけでもなく、中性子が多過ぎてもまた、原子核の形を保てなくなり不安定になります。

そのような中性子過剰核では「中性子が陽子に変わる」ことによって安定を求めようとし、

中性子 → 陽子 + 電子 + 反電子ニュートリノ

という反応を起こして中性子が1個減って陽子が1個増えます。質量数は変わりません。この反応で発生する電子をβ線またはβ線、β線を出す崩壊をβ崩壊またはβ崩壊と言います。ニュートリノは岐阜県飛騨市神岡町にあるカミオカンデという施設において世界で初めての観測に成功したことで有名になった素粒子の一種で、反電子ニュートリノは電子ニュートリノの反粒子です。太陽を百万個貫通して1回反応するような、他の物質とほとんど反応しない素粒子して知られています。

β線(β線)の正体はマイナスの電荷を持つ電子

中性子過剰核で発生。透過力は弱く薄い金属板やプラスチックで遮蔽可能。

β線(β線)はα線ほどではないものの透過性が弱く、生物に対する影響もα線ほど高くありません。空気中を数m、アルミ板を数mm、プラスチック板1cm程度で遮蔽できます。

主なβ線源は炭素14、カリウム40、ストロンチウム90、セシウム137などで、炭素14とカリウム40は天然由来で食品中に含まれており、ストロンチウム90やセシウム137は原発や原爆で発生する核分裂生成物として有名です。

・β崩壊

β線はβ線とは逆に陽子過剰核で発生します。

安定核と比べて陽子が多い(中性子が少ない)原子核は自然界には存在しませんが、加速器を使って人工的に作ることができ、初期がんの診断などに利用されています。

陽子過剰核は中性子過剰核とは逆に「陽子が中性子に変わる」ことによって安定を求めようとし、

陽子 → 中性子 + 陽電子 + 電子ニュートリノ

という反応を起こして陽子が1個減って中性子が1個増えます。こちらでも質量数は変わりません。この反応で発生する電子をβ線、β線を出す崩壊をβ崩壊と言います。

β線の正体はプラスの電荷を持つ陽電子

陽子過剰核で発生。陽電子は電子とくっ付くと電磁波(γ線)を出す。

β線こと陽電子の遮蔽については基本的にβ線の遮蔽と同じに考えてもよいのですが、物質中を通過するときに陽電子は電子とくっ付いて反応を起こして電磁波(γ線)を出して消滅するため、遮蔽にはこの電磁波の存在を考慮に入れなければいけません。

主なβ線源はフッ素18、ナトリウム22などで、PET診断に利用されています。

③γ線

γ線の正体は可視光やX線よりもさらにエネルギーの高い光(電磁波)です。α線やβ線を放出した原子核はほとんどの場合中途半端なエネルギー状態になり、ある程度安定な状態になるために余分なエネルギーを光の形で放出します。原子核のまわりにいる電子が出す光をX線と言いますが、このように原子核の中から出てくる光をγ線と呼びます。

γ線の正体は高エネルギーの光(電磁波)

α線やβ線を出した後の生成核種が中途半端なエネルギー状態の時に発生。強い透過力を持つ。

 

γ線はα線やβ線と比べて透過性が強いため薄い金属板程度では止まらず、遮蔽には鉄や鉛、コンクリートなど厚い壁を使用します。

主なγ線源はコバルト60、バリウム137(セシウム137の娘核種)などです。

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