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核融合炉の開発と問題点

目次
かつて「夢の未来技術」だった核融合炉

泥沼化してしまった国内のプラズマ核融合炉開発

別の研究分野からの核融合炉の登場

かつて「夢の未来技術」だった核融合炉

核融合炉とはその名が示す通り核融合反応を利用した原子炉の一種であり、ウランやプルトニウムなどの重い原子を使用する核分裂炉に対して、水素やヘリウムなどの軽い原子を使用します。

核融合炉の研究は1950年代から本格的にスタートしたと言われています。その時にはすでに核分裂炉による発電が実用化されていましたけれども、燃料棒を1回だけ使用して再処理せずに廃棄するという発想しか無かったことから、当時把握されていたウラン235の埋蔵量では50年程度で枯渇してしまうと考えれれていました。必然的にいづれ使えなくなる核分裂炉に代わる「次」が求められ、原爆の核分裂エネルギーを核分裂炉発電に転用できたように、水爆の核融合エネルギーを制御し、電力としてゆっくり取り出す核融合炉が提案されたのはごく自然な流れでした。加えて核融合炉は核分裂炉は異なり、核融合は核分裂ように連鎖反応が起きないため、暴走の危険性が原理的に無く、運転を停止している際のエネルギー損失や炉心溶融のリスクも無く、後々問題となる高レベル放射性廃棄物をほとんど出さないという長所があり、まさに「夢の未来技術」の1つであると考えられていました。

実際に核融合炉の開発研究が行われるにあたって最初かつ最大の課題となったのは「重水素と三重水素を1,000万℃で安定に保存すること」でした。核融合炉は行ってみれば地上において「人口の太陽」を再現することに他ならず、人工的に極めて高温高圧の環境を作り出し、それを維持する必要があります。1,000万℃の環境下でもはや気体ではなく原子核と電子がバラバラなプラズマ状態となった重水素や三重水素を1か所に留めおく方法を確立することは困難を極めました。多種多様な閉じ込め方法が考案され、その中で最も実現可能性が高いと思われた方法は、強力な磁場によってプラズマ状態にした重水素と三重水素を閉じ込める方法でした。これを磁場閉じ込め方式と言います。閉じ込める磁場の形状も様々な提案があった中で、リング型のコイルをドーナツ状に並べて、その中で発生させた磁場にプラズマを閉じ込めるトカマク型が最も有望に思えました。日本では政府が主導となって国立のプラズマ核融合のための研究所(茨城県那珂市の那珂フュージョン科学技術研究所など)が設立され、年間数千億円の巨額な研究費が投入されました。この他にも多くの大学の理系学部においてプラズマ核融合に関連する研究をしている者がおり、世の中で物理学者と呼ばれている者の10%程度がプラズマ核融合に関わっている研究者であると言われています。

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泥沼化してしまった国内のプラズマ核融合炉開発

国内では日本政府が主導となって巨額を投じ、多くの人員が研究に携わってきた核融合炉開発でしたが、残念ながらこの70年間においてプラズマ核融合の研究は全く進みませんでした。プラズマを1,000万℃どころか100万℃でも10万℃でも安定的に保持することが出来ていません。仮にプラズマを1,000万℃で保持できたとしても、それはあくまで核融合発電への道筋の第一歩に過ぎません。しかもプラズマ保持の問題を解決した後には2つの大きな問題が控えているのです。

第1の問題は「三重水素をどうやって安価に入手するか」という経済的な問題です。

福島第一原発事故の処理水関連のニュースで何かとよく耳にする三重水素ことトリチウムですが、意外なことに純度の高いものを用意しようとすると非常に高価になります。現在の方式のように重水炉で重水に中性子を吸収させて三重水素を作っていては、どんなに安く作ろうとしても1g当たりに数百万円の費用が掛かります。発電用に核融合炉を動かした場合、年間数百㎏の三重水素が必要となるという試算を鑑みても、経済的に見て費用対効果が非常に悪いどころか、赤字運用となってしまうのが目に見えています。

そして第2の問題は「核融合反応で飛び出してくる高速中性子をどうするか」という原理的な問題です。

重水素と三重水素の核融合で発生する中性子とヘリウム4のうち、質量差の関係で反応で発生したエネルギーの80%を中性子が持っていってしまいます。中性子は電気的に中性であるため、当然プラズマの中にはとどまらず、エネルギーを捨ててしまうことになります。また厄介なことに中性子には運動エネルギーがある値を超えると鉄などの普通の原子核を壊してしまうという特性があります。これを中性子照射脆化と言います。核分裂炉で発生する高速中性子の運動エネルギーはその値の半分程度に過ぎず問題にならなかったのですが、核融合炉で発生する中性子の運動エネルギーはその値の4倍に達しており、核融合炉の壁やコイルを容易く破壊してしまいます。核融合反応のエネルギーを取り出すためにも、核融合炉の壁やコイルを中性子照射脆化から守るためにも、核分裂炉の減速材のような中性子の運動エネルギーを吸収する物質が必要となりますが、最も効率よく中性子を減速させることのできる水素を磁場で閉じ込めたプラズマの周りに配置することは極めて困難であり、炭素のような固体であっても相当な厚さが必要であり現実的ではありません。

以上のように現在国内で行われている核融合炉開発研究は解決すべき問題が山積みで、泥沼状態に入り込んでいます。なおかつ別ページでも解説しましたが、核融合炉の研究がもたついている間にウラン238やトリウム232に熱中性子を吸収させて原子炉を運転しながら核燃料を生み出していく増殖炉が実用化し、人類に必要なエネルギーの900万年分を賄えるようになったことが判明しました。つまり、ウラン235が枯渇する50年以内に核融合炉を実用化しなければならないという前提条件が完全に崩れてしまったのです。

日本でプラズマ核融合の研究は巨額を投じ過ぎてすでに止められないという状態です。

70年間、何の成果も出せていない研究分野に巨額の国費と多数の人材を注ぎ込む意義はもはやありません。

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別の研究分野からの核融合炉の登場

日本国内では泥沼状態に陥ってしまった核融合炉の開発研究でしたが、だからと言ってその可能性が完全に潰えた訳ではけではありません。ここに来て別の研究分野から核融合につながる発見が最近ありました。

その別の分野とは、アメリカとメキシコの国境における入国管理の分野でした。現代のアメリカではメキシコから入ってくる乗用車やトラックの中に隠された密入国者や麻薬の摘発が国家的重要課題となっています。密入国者や麻薬は金属製のコンテナの中に隠された状態で国境を越えて来るため、コンテナの内部を透視する装置の開発が活発に行われています。空港の手荷物検査などで使用されている従来のX線透視では原子番号の5乗に比例して吸収されることから、カバンやスーツケースの中を透視することは出来てもても、金属製のコンテナの中を透視することは出来ませんきません。原理的に金属内部を透視できる放射線は、γ線・中性子・宇宙線μ粒子の3種類だけです。そのうち、重水素と三重水素を加速器で適切な速度に加速して正面衝突させ、発生する中性子をコンテナに照射する透視装置の開発が行われています。この研究の中で、次のような核融合方法が見つかりました。

重水素と三重水素の衝突点の周りをフッ化リチウムLiFとフッ化ベリリウムBeF2の混合物である液体のフリーベガラスで囲みます。このフリーべガラスは化学的にはトリウム炉の解説で登場したフリーべガラスと同等のものですが、トリウム炉用のフリーべガラスはリチウム7を使っていたのに対し、ここではリチウム6を使います。リチウム6はリチウム7に比べて20,000倍の熱中性子吸収能力があり、ベリリウム9とフッ素19は熱中性子をほとんど吸収しません。重水素と三重水素の衝突で生まれた高速中性子はフリーベガラスを減速材として運動エネルギーを失い、リチウム6に吸収されます。そしてリチウム7ではなくヘリウム4と三重水素になる核分裂反応を起こします。

この反応は以下のようになります。

三重水素と中性子は生まれては消えてゆくので、この反応は

重水素 + リチウム6 → ヘリウム4 + ヘリウム4

と同じになります。重水素は加速器に供給し、リチウム6は適宜フリーベガラスに補充します。ヘリウム4は液体のフリーベガラスから気体として湧き出しますので、容易に分離することが出来ます。

重水素とリチウム6を使用するこの原理は、偶然にも固体化に成功した水爆と同じもの(あるいは露見した?)でした。重水素と三重水素核融合で発生した中性子は全てリチウム6に吸収され、中性子とリチウム6による核分裂で発生した三重水素は液体のフリーベガラスから気体として湧き出して容易に分離していき、全て加速器で使用するため中性子と三重水素の補充は不要となります。

重水素と三重水素は核融合に最適の速さに加速され、高速中性子の運動エネルギーはフリーベガラスが吸収します。ヘリウム4の運動エネルギーもフリーベガラスの熱エネルギーに変わり、温まったフリーベガラスは冷却材として熱交換器へ送られて戻ってきます。

高速中性子が衝突したら原子核は破壊されると書きましたが、その現象は陽子数と中性子数がどちらも8以下の原子核では起きません。ここではフッ素19だけが問題になってしまうものの、適切な量のフッ素を補充すれば良いでしょう。フッ素19が中性子によって破壊されると、酸素18またはフッ素18になります。フッ素18は半減期110分で酸素18になります。酸素18は安定原子核なので、フリーベガラスから酸素が少し湧き出るだけで済みます。

以上のように、この重水素と三重水素の加速器核融合中性子とリチウム6による核分裂フリーベガラス減速材兼冷却材はプラズマ核融合での問題点を全て解決しています。新規開発すべき技術や深刻な問題点は一つもなく、全て既存の技術で実現可能です。おそらく本格的に研究すれば10年以内に実用化できるでしょう。

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