目次 |
ラドン対策に必要な「政策」 |
ラドン対策に必要な「政策」
国連加盟国である日本国は、本来であればUNSCEAR2008を尊重する政策を実施しなければなりません。
具体的に対応策を並べれば、
1.全ての新築建造物の完成検査でラドン濃度測定を行う。
2.全ての既存建造物で毎年ラドン濃度測定を行うよう呼びかける。
3.上記の測定でラドン濃度が100Bq/m3か外気の5倍以上の場合、空調の改修を命じる。
別ページでも述べていますが、日本ではUNSCEAR2008についてはほぼ全ての放射線の専門家が誤解していました。それが肺がん対策の遅れにつながった一因と言えます。
クーラー普及前は誰も予想できなかったことですが、エアコンが普及すると室内の気密性が向上し重いラドンガスは室内下部に濃縮する、その濃度は帰宅困難地域の基準の50%にも達するというのがUNSCEAR2008の主張です。ラドン濃度を測定し、もし危険レベルなら空調を改良・増強することを推奨します。我々が考える改造はDIYの店で材料を買って自分で作業するレベルから、建築の専門家に依頼しても数十万円程度の費用で賄えるものまであります。EPAの声明でも典型的なラドン対策費用は1000ドルと書かれています。
クーラー普及前の1970年の肺がん死者数は年間約10,000人でした。それが現在は約80,000人に急増しました。1970年のラドンが原因の肺がん死者数は6,000人と推定できます。がんは進行が遅い病気です。最初のがん細胞が発生してから死に至るまで平均20年はかかります。タバコが原因の肺がん死者数はその年より20年前のタバコの売上に比例するとしたら、1950年に比べて2000年のタバコの売上は約3倍なので、今タバコが原因の肺がん死者は年間12,000人程度でしょう。すなわち現在ラドンが原因の肺がん死者数は70,000人弱です。もし室内のラドン濃度が外界と同じなら年間7,000人で済みます。米国ではEPAによるとラドンによって年間の肺がん死者数は2.1万人だそうです。現在の人口は日本がおよそ1.2億人、アメリカがおよそ3.3億人であるため、一定人口当たりのラドンによる肺がん死者数は日本が米国の10倍となります。
最近の15年間にアメリカでは有効な対策が行われ日本では無策であったことの結果として、2040年ころのラドンによる肺がん死者数の人口比は今よりずっと大きくなり日米間の格差が20~50倍になることを覚悟しなければなりません。いますぐ効果的なラドン対策を始めても目に見える成果が出るのは2040年以降でしょう。しかしやらないわけにはいけません。
追記:少しずつ動き始める日本(2025年4月14日現在)
環境省は2025年3月31日のHP更新において、屋内ラドンに関するWHOの勧告屋内のラドン濃度が100~300Bq/m3を超す場合には対策を講じることを推奨)や各国政府の対策について触れるようになりました。
原子力規制委員会でも各国政府が実施しているラドン対策についての調査が行われました。
今後は日本国内でも屋内ラドンに対する危険性の周知や対策が行われていくと予想されます。
参照:
環境省
屋内ラドン
原子力規制委員会
令和 5 年度放射線対策委託費(我が国の屋内ラドン対応の在り方検討に関する調査)事業 成果報告書(PDFファイル)