~がん死者を毎年10万人減らす会社~

この記事をSNSでシェア

~がん死者を毎年10万人減らす会社~

この記事をSNSでシェア

原爆について

原爆こと原子爆弾はウラン235やプルトニウム239が引き起こす核分裂反応のエネルギーを爆発エネルギーとして使用する兵器のことであり、同じ重さの通常火薬を使用した爆弾と比較して数百万倍の威力を発揮する大量破壊兵器として位置づけられています。

原爆の材料として使用するウラン235やプルトニウム239は核分裂性物質と呼ばれており、中性子またはγ線を吸収すると誘導核分裂を引き起こして平均2.5個の中性子を放出します。この時に放出された中性子が別のウラン235やプルトニウム239に吸収されると連鎖的に核分裂が継続するのですが、ウラン235やプルトニウム239の塊が一定の量よりも小さすぎると中性子が外に飛び出してしまって連鎖反応が継続できなくなり、逆に一定の量よりも大きくなると中性子が塊の中に留まって全て放出量と吸収量が釣り合って連鎖反応が継続できるようになります。この核分裂の連鎖反応が継続する状態のことを臨界状態と言い、臨界状態になるウラン235やプルトニウム239の一定の量のことを臨界量と呼びます。原爆ではこの臨界量をさらに大幅に超えた量の核分裂物質を用意し、核分裂反応を繰り返すごとに放出される中性子の数が指数関数的に増加する状況を作り、連鎖反応を一気に進行させることによって瞬間的な爆発エネルギーを生み出します。

原爆は核分裂の連鎖反応を制御しなければならない原子炉とは異なり、冷却材や制御棒の必要もなければ減速材もありません。原爆の構造自体は極めて単純であり、臨界量以下に分割した核分裂性物質の塊を瞬間的に1か所に集めれば、ウラン235やプルトニウム239は勝手に臨界状態に達して爆発を引き起こします。基本的に核分裂性物質の塊を1か所に集めるのには普通の火薬を使用しますが、極端な話をすれば人力でも起爆は可能です(もちろんそれを行った本人は確実に死亡します)。

原爆には材料的な観点からウラン235とプルトニウム239を使ったものの2種類に分けられるほか、構造的な観点からも2種類に分けることが出来ます。筒の両端に臨界量に達していない半球状の核分裂性物質の塊を配置し、通常火薬の爆発によって合体させるガンバレル型砲身方式と呼ばれる形式と、球形に配置した核分裂性物質に対し、その外側に並べた通常火薬を同時に爆発させることによって位相の揃えた衝撃波を当てて一瞬かつ均等に圧縮させて臨界状態に至らせるインプロ―ジョン型爆縮方式と呼ばれる形式です。

第二次大戦時において、アメリカ軍は日本が降伏する前に原爆の効果を実測したいという思惑がありました。そして1945年8月6日にリトルボーイと名付けられたガンバレル型のウラン爆弾が広島に投下され、同年8月9日にファットマンと名付けられたインプロ―ジョン型のプルトニウム爆弾が当初小倉に落とすつもりだった予定を当日の天気が曇りだったのを理由に第二目標の長崎に変更して投下しました。広島と長崎の2つの原爆の効果を精密に計測し、他の核実験とも照らし合わせた結果、ウラン原爆とプルトニウム原爆において材料の違いで威力に差がほぼ無いこと、ガンバレル型はインプロ―ジョン型に比べて核物質の量に対して威力が低いことや搭載機の墜落によって暴発する可能性があること、などが判明しました。

また製造費用の観点においても、天然ウランからウラン235を高純度に取り出す(ウラン濃縮)のには多大なコストが掛かるという現実も突き付けられました。ウラン単体では安定的に気化させるのには3,800℃の高温が必要なに対し、ウランをフッ素と反応させて6フッ化ウラン(UF6)の状態にすればたった56.5℃で昇華するという性質がありました。ウラン濃縮ではこの6フッ化ウランの性質に着目し、気化した6フッ化ウランを遠心分離機に入れて運転すると、天然にはフッ素の同位体がフッ素19の1種類しか存在しないこと、すなわち6フッ化ウランの質量の違いはウランの質量数の違いに由来することから、周辺部には重いウラン238が高濃度に存在する劣化ウランが、中心部には軽いウラン235が高濃度に存在する濃縮ウランが生まれます。通常の原子炉ではウラン235の割合が3〜5%の低濃縮ウラン、高速増殖炉ではウラン235の割合が18%前後の高濃縮ウランを使いますが、ウラン原爆ではウラン235の割合を少なくとも90%以上に高める必要がありました。ウラン235を兵器級に濃縮するには莫大な電気代が必要であるのに比べて、プルトニウム239は黒鉛炉を製造・運転することによってずっと安価に生成できることもわかってきました。

以上のことから、第二次大戦後の世界の歴史において最盛期には10万発の原爆が存在していたと言われていますが、その全てがプルトニウム原爆であり、全てがインプロ―ジョン型だったと記録されています。

2025年現在、昨今のニュースで話題となっているイランでは原爆を独力で開発中です。プルトニウム原爆を作るには黒鉛炉が必要なのはこれまでにも語ってきましたが、黒鉛炉は軽水炉の1,000倍の体積になるという特徴もがあるため、地下深くに秘密裏に建設するのは困難であり、動かせばすぐさま外部から発覚してしまいます。加えて敵国から原子炉を攻撃されると放射性物質が広範囲に拡散するなどして被害が甚大となる危険性もあります。そこで費用はかかっても広島型のウラン原爆を作ることにしたようです。ウランの濃縮は既存の軽水炉燃料用の低濃縮ウラン製造施設を拡大すれば達成できるため、密かに地下深くに巨大なウラン濃縮施設を建設し、まずは核分裂の連鎖反応が起きる最低限の濃縮率であるウラン235の割合80%を目標にしているようです。2025年6月のイスラエルやアメリカによる空爆でウラン濃縮施設は攻撃されましたが、どれだけの被害があったかは今のところ判明していません。しかし一般人への被害は極めて限定的だったのは間違いありません。これがもし黒鉛炉によるプルトニウム生産の場合であり、空爆によって破壊されていたとしたら、中東地域は深刻な放射線被害に見舞われていたことでしょう。

前へ 戻る

関連ページ

この記事をSNSでシェア