消化器官を水滴に溶け込んで通過するポロニウム
私たちは食事の時、ご飯だけでなく水、お茶、味噌汁、スープといった形で水分を摂取します。
空気中のラドン222から生じたポロニウムは水に溶けやすい性質を持つため、それらに含まれている水の中に溶け込んでいきます。そしてそのまま経口摂取によって体内に取り込まれると、胃や腸の中で水分は雨粒程度の大きさ(直径2〜3mm)となって通過します。ポロニウム218から出るα線は水中では50μm程度しか飛ばないことから、水粒子に溶けたポロニウム218は胃や小腸にほとんど影響を与えることなく比較的短時間で大腸にまで達します。
しかしその時、ポロニウム218は胃や小腸を移動している間に鉛214に変わり、鉛214はビスマス214に変わり、そして再度α線を出すポロニウム214に変わります。鉛214やビスマス214が出す放射線(β線)のがん発生能力はラドンやポロニウムが出すα線の1/100以下しかありませんが、ビスマス214がβ線を出して生じるポロニウム214に変わり、1万分の1秒でがんを作る能力が非常に強い放射線を出します。ラドン222がポロニウム218に変わった時から2番目のポロニウム214が放射線を出すまでの平均時間は約50分です。この時間は飲料水が大腸に届くのに適当な時間と言えます。
上図のようにラドン222から変わったポロニウム218は水粒に溶けて鉛214をへてビスマス214になります。鉛214やビスマス214は水粒に乗って胃や小腸を通過して大腸に着きます。大腸で水分が吸収されてビスマス原子が単独で大腸の内壁にくっつきます。ビスマスが2番目のポロニウムに変わった直後に出る放射線が大腸の内壁を直撃します。
大腸がんは世界中のほとんどの国で同程度の発症率・死亡率です。目立つのは近年の日本で死者数が急増していることぐらいです。我が国ではクーラー普及前の1970年に7,000人程度だった大腸がんの年間死者数が今では50,000以上になり、死者数第二位のがん(第一位は肺がん)になりました。大腸がんの原因候補を見つけた人はいません。