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原子炉を構成する4つの基本要素

原子炉は元々プルトニウム原爆を作るために生まれた

放射線、とりわけ原子力と聞くと多くの方が原子力発電を連想されるかと思います。

20代以上の方であれば2011年の東日本大震災による津波を発端とした福島第一原発事故の記憶は印象深いでしょうし、10代以下の方でもその後の廃炉作業や汚染処理水関連の情報はいまだにニュースを賑わせていることをご存じでしょう。日本各地では一度止めてしまった原子炉を再稼働させようしたり、新しい原子炉を建設したりする動きが着々と進んでいます。

原子力発電の心臓部と言える原子炉ですが、元々原子炉は発電用に開発されたものではありませんでした。

ウラン238に中性子を吸収させ、原爆の燃料として使うプルトニウム239を製造するための「炉」として生み出されたのが原子炉の始まりです。

第二次大戦中に開発されてその後しばらくプルトニウム239製造目的のみに使用されていた原子炉ですが、やがて副産物として生み出される膨大なエネルギーに着目して発電を行ったり、あるいは原子力潜水艦や原子力空母の動力として活用したりするようになりました。

ここでは原子炉の具体的な種類や特徴を解説する前に、燃料や減速材、冷却材、そして制御棒といった原子炉を構成する4つの基本要素についてお話します。

核分裂の連鎖反応を行う「燃料」

核分裂の連鎖反応を扱う原子炉で使用できる燃料は、原爆のページで解説したものと同じウラン235、プルトニウム239、ウラン233です。

この中で世界的に見るとプルトニウム239をメインの燃料として使用する原子炉はほとんど存在しません。これはプルトニウム239が原子炉の燃料として不適格というよりも、元々原爆用にプルトニウム239を作っておきながら、それを販売価格の安い発電用に使うのは「あまりにもったいない」という軍事的・政治的な理由によるものです。原爆の原料となるプルトニウム239は厳格に管理されており、特に核兵器保有国では優先的に製造に回されています。

ただし例外として唯一日本の原子炉だけが、平和国家して「原爆を絶対に持たない(=プルトニウム原爆を作らない)」という方針の下、後述するウラン235を運転する時にどうしても生じてしまうプルトニウム239をウラン235の燃料に混ぜて使用しています。このようにプルトニウム239をウラン235の燃料に混ぜて原子炉を運転することを「プルサーマル」と言い、混ぜた燃料のことを「MOX燃料(Mixed Oxide Fuel)」と言います。

次にウラン235についてですが、現在主流となっている原子炉の多くがこのウラン235を使った原子炉(詳しくは別ページで)です。これらの原子炉で使われている燃料もまたウラン原爆の燃料と同様に、ウラン235含有率が0.7%しかない天然ウランを濃縮して作られています。その濃縮率は原爆のように99%という高純度のものは必要ありません。一般的な原子炉では3~5%の低濃縮ウランが、一部の特殊な原子炉では15~18%の高濃縮ウランが使用されています。

そしてウラン233について詳しくは別ページのトリウム炉で解説しますが、日本国内ではあまり知られていないものの、インドや中国で実用化に成功しており、ウラン235燃料よりも発電に特化した原子炉と評されています。

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中性子の速度を落とす「減速材」

一部を除くほとんどの原子炉には減速材と呼ばれる物が必要になります。

例えばウラン235に中性子1個が吸収されて核分裂を起こすとき、分裂する原子核から中性子が平均2.5個飛び出してくると解説しました。このまま核分裂の連鎖反応を継続させたいのであれば、その時に飛び出してくる中性子2.5個の内、少なくとも1個以上が次のウラン235の原子核で止まって吸収させる必要があります。ところが分裂時に飛び出した中性子の速度は光速の約7%(≒秒速2,100万m)と極めて高速であり、その速度のまま次のウラン235の原子核に衝突したとしても、速すぎて吸収される確率が非常に低く、突き抜けるか速度をほとんど落とすことなく弾性散乱するかしてしまいます。

このような中性子のことを高速中性子と言います。

原爆の場合であればウラン235の純度が99.9%以上であるため、何百回何千回と衝突を繰り返していくうちに高速中性子の速度が落ちて原子核に吸収される速度域となるため問題にはなりませんでしたが、ウラン235の純度が低い原子炉の場合はウラン238などの他の原子核に吸収されたり、あるいは原子炉の外へ飛び出してしまったりするため、飛び出してくる中性子の速度を熱中性子と呼ばれる秒速2,000~3,000mに落としてウラン235原子核に吸収される確率を少しでも高くする必要がありました。

これを担うのが減速材の役割です。

中性子は電荷を持たない粒子であるため、荷電粒子のように電磁場の力で加減速することが出来ません。

そのため中性子の速度を落とすのに最も簡単な方法は「同じくらいの質量の粒子に衝突させること」です。これはビリヤードやカーリングで見られる現象と同じであり、運動している粒子を静止している全く等しい質量の粒子に衝突させれば、弾性散乱の法則により平均して衝突後の運動エネルギーを衝突前の2分の1にすることが出来ます。

中性子とほぼ同じ質量を持つ粒子は陽子であり、陽子1個の原子核で構成された原子は水素(軽水素、プロチウム)です。

このことから中性子を減速させる効果が最も優れた物質は水素を大量に含む普通の水(軽水)となります。

ところが軽水をそのまま減速材として使用するのは、軽水素そのものが中性子を吸収して陽子1個中性子1個の重水素(デューテリウム)に変わってしまう確率が無視できないレベルで発生してしまうため、原子炉の開発当初は減速材に軽水を使用した原子炉は作れないと考えられていました(ただしのちの研究で克服し、軽水炉として実用化)。

軽水の使用を断念した開発初期の原子炉において、次に減速材の候補として上がったのは陽子1個中性子1個の原子核を持つ重水素でした。重水素は軽水素よりも中性子減速効果で劣るものの、中性子を吸収する確率が軽水素よりもずっと低かったため、重水素2個酸素1個で構成された重水を減速材に使用した重水炉が開発されました。

重水素による原子炉は一応成功したけれども重水製造には莫大なコストが掛かるため、重水素よりもさらに重い原子核が模索されました。原子番号2のヘリウムは中性子をほとんど吸収しないものの気体であるため密度が低くて減速材に適さず、原子番号3のリチウム、原子番号4のベリリウム、原子番号5のホウ素は毒性が強く、また中性子を吸収しやすい同位体も含んでいたため取り扱いにくいという欠点を抱えていました。

そして最終的に選び出されたのが原子番号6の炭素12(陽子6個中性子6個)でした。

炭素12の減速効果は軽水や重水よりも小さいものでしたが、炭素の結晶である黒鉛が安価に手に入り、取扱いやすい固体であったため、黒鉛を減速材とした黒鉛炉が開発されました。

このあたりの重水炉、黒鉛炉、そして軽水炉については別ページで詳しく解説します。

またある種の原子炉には減速した熱中性子ではなく、高速中性子をそのまま利用するタイプの原子炉も存在します。これを高速中性子炉と言い、このタイプの原子炉に減速材は存在しません。

(高速中性子炉についての解説はいずれ公開予定)

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原子炉のエネルギーを取り出す「冷却材」

原子炉の中で核分裂の連鎖反応が進むと、炉内に熱エネルギーが発生します。

当然のことながらこの熱エネルギーを放置していると、原子炉の温度はどんどん上昇し、やがて限界を迎えて原子炉本体が溶けてしまう事態が起きてしまいます。これがいわゆるメルトダウンや炉心溶融と呼ばれる重大な原発事故にも繋がる現象です。

そのため原子炉にはこのような事態を防ぐために「原子炉から熱エネルギーを取り出す機能」が必要不可欠になります。これを原子炉の視点で見れば原子炉を冷やす行為に他ならないことから、この機能を行う物体のことを冷却材と呼んでいます。原子力発電所はこの冷却材によって取り出した熱エネルギーを発電に利用しています。

どのような冷却材が使われているかは原子炉の構造によって変わります。

例えば減速材が軽水と重水の原子炉の場合は冷却材もそのまま軽水と重水が使われており、減速材が黒鉛の場合は軽水のほかヘリウムガスや二酸化炭素ガスなどが、減速材を使用しない高速中性子炉の場合は液体ナトリウムが、そして燃料にウラン233を使用したトリウム炉の場合は液体ガラスの性質を持つフッ化リチウムとフッ化ベリリウムの混合体であるフリーべガラスが用いられています。

主な冷却材

原子炉の構造冷却材に使われる物質原子炉例
減速材が軽水や重水軽水・重水軽水炉・重水炉
減速材が黒鉛軽水・ヘリウムガス・二酸化炭素ガス黒鉛炉・高温ガス炉
減速材無し液体ナトリウム(金属)高速中性子炉
燃料がウラン233リーべガラストリウム炉

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原子炉の出力を調整する「制御棒」

原子炉の最後の構成要素として制御棒と呼ばれるものがあります。

原子炉は基本的に核分裂の連鎖反応が起きるか起きないかのギリギリの状態を維持して運転を行うため、その時に原子炉の出力を細かく微調整する機能が必要になります。これが制御棒の役割です。

制御棒の方式には2つの種類があります。

1つは原子炉の中にホウ素やカドミウムやガドリニウムなどの中性子を吸収しやすい物質で出来た棒を出し入れすることで原子炉の出力を制御する方法であり、制御棒の入れる長さを増やせば中性子が吸収されて核分裂の連鎖反応の勢いが弱くなり、逆に制御棒を抜いて入れる長さを減らせば連鎖反応の勢いが強くなるようになっています。

もう1つは主に黒鉛炉で採用されている方式で、制御棒に使われている素材は減速材と同じ黒鉛です。あらかじめ原子炉の減速材の量を核分裂の連鎖反応が起こらないギリギリに設定しておき、いざ原子炉を動かしたり出力を上げたいときは追加の減速材を制御棒として挿入し、逆に原子炉を止めたり出力を下げたいときは制御棒を抜く、という方式が採られています。

以上のように燃料・減速材・冷却材・制御棒が原子炉を構成する4つの基本要素です。

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  • 原子炉の燃料は原爆と同じでウラン235、プルトニウム239、ウラン233が使用可能。ただし軍事的な理由でプルトニウム239が採用されるケースは少なく、世界で唯一日本だけがプルトニウムとウランを混ぜたMOX燃料を使用している。
  • 原子炉内で核分裂の連鎖反応を継続させるには核分裂で飛び出してくる高速中性子を熱中性子の領域まで減速させる必要がある。これを行うのが減速材の役割であり、軽水や重水、黒鉛などが使用させれる。また減速材が存在しないタイプの原子炉もある。
  • 原子炉で連鎖反応が進むと熱エネルギーが発生するため、これを外部へ取り出す冷却材が必要になる。冷却材には軽水や重水のほか、ヘリウムガス、二酸化炭素、液体ナトリウム、フリーべガラスなどが用いられる。
  • 制御棒には原子炉の出力を微調整する役割があり、中性子を吸収しやすい物資炉を出し入れする方式と、追加の減速材を出し入れする2種類の方式がある。
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