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有害な物質が全て「がんの原因」とは限らない
別ページにてがんという病気の正体が「正常な細胞の細胞核の中にあるDNAの2重螺旋構造の両方が同時に破壊され、修復エラーの突然変異によって細胞分裂の制御を失ってしまい、免疫で排除されることなく際限なく増殖してしまったもの」と解説しました。
がんの原初となるがん細胞を生み出してしまう原因は多種多様なものが確認されいます。
しかしこれらの原因は一般的な毒物と考え方や取り扱いが異なっており、以下の4つの条件を満たしていなければなりません。
- 最初のがん細胞が生まれた時に、発生場所に存在していたこと
- 正常細胞を殺すことなくがん細胞に変える能力を持つこと
- 「がんの原因」の摂取量とがん発生率の増加量が比例していること
- 「がんの原因」が体内に入る経路と量がわかっていること
本ページでは肺がんの原因と目されるタバコやアスベスト、胃がんの言われているピロリ菌、そしてこのホームページでメインに取り扱っている放射線への評価を交えつつ、この4つの条件について解説します。
条件①:正常細胞を殺すことなくがん細胞に変える能力を持つこと
第1の条件は当たり前と言えば当たり前なことですが、「がんの原因」には正常細胞の細胞核内にあるDNAの2重螺旋構造だけを破壊する能力が必要であり、その後で細胞が生存したまま突然変異を起こしてがん細胞に変化しなければなりません。
別ページでも解説しましたが、DNAの2重螺旋構造が損傷を受けた時に必ずしも突然変異が起きるというわけではなく、DNAへの損傷が小さい(1本鎖切断の場合は特に)修復機能が働いて問題なく回復するケースもあれば、DNAへの損傷が大きすぎたり他の細胞組織に致命的なダメージを与えたりしてしまうと細胞そのものが死亡してしまう(細胞死=がん細胞にはならなくなる)ケースもあります。
つまりDNAへのダメージが小さすぎてそもそも突然変異が起きない場合において条件を満たしていないのはもちろんのこと、ダメージが大きすぎてDNAはおろか細胞全体へも影響を与えるようなものは条件を満たしていません。
「がんの原因」は単にDNAを破壊する能力を持っているだけでなく、細胞膜や核膜、そしてミトコンドリアといった細胞の生命活動に必要不可欠な組織構造を損なわせることなくDNAの2重螺旋構造だけ破壊し、そのまま細胞の外に出て行くか、あるいは消滅するような性質が必要不可欠となります。
例えばタバコの場合は、ニコチンやタールといった発がん性物質と呼ばれているものが具体的にどういう作用でもって細胞を殺さぬままDNAだけを傷付けるのかはわかっていませんが、喫煙者と非喫煙者で比べた時に喫煙者の肺がんの発生率が明らかに高まることから、統計的に「タバコはがんの原因」とされています。
時折ニュースで報じられるアスベストと呼ばれる物質の場合は、繊維状の鉱石物質であるアスベストの構造が非常に細かい針のような形状をしており、細胞サイズで見ると刀や槍のような物となります。そしてアスベストが細胞に刺さると核まで届きDNAの2重螺旋の両方を切ってしまうこともあります。その後細胞の動きでアスベストが抜けると、細胞膜や核膜は修復され、DNAの切れた細胞が残ります。切れた場所が細胞分裂を止める働きに関係する場所であるならば、この細胞はがん細胞になってしまいます。このようにメカニズムがはっきりと説明できることにより「アスベストはがんの原因」と言われています。
そして胃がんの原因としてよく取り沙汰されるピロリ菌の場合が、ピロリ菌がDNAを切断することは今のところ実証されていません。ピロリ菌が増殖したから胃がんになったのか、胃がんが進行して胃酸の分泌が少なくなったのでピロリ菌が増殖しやすくなったのか、どちらが先は分かっていません。ピロリ菌は1本のベン毛を高速回転させて移動するという生態であるため、ベン毛が細胞にあたった場合、DNAどころかその細胞全体を傷つけて破壊してしまう可能性が非常に高くなります。このことから「ピロリ菌はがんの原因の条件を満たしていない」と私たちは判断しています。
現在、我々の身の回りに存在するものの中で、最も確実にがん細胞を発生させる要素と言えるのは放射線です。
α線やβ線やγ線といった放射線がどのような作用で細胞のDNAに損傷を与えるかについては別ページにて解説していますが、放射線による影響ががんを始めとする健康被害をもたらすことが広く知られているのと同時に、放射線治療や農畜産物の品種改良などの分野で有効活用されています。
人間にとって都合が良い突然変異は品種改良と呼ばれており、人間にとって都合の悪い突然変異はがんと呼ばれている。その程度の違いしかありません。
条件②:最初のがん細胞が生まれた時に、発生場所に存在していたこと
第2の条件も当たり前と当たり前のことですが、正常細胞が突然変異を起こすきっかけとなったDNAの損傷が発生した瞬間、その「がんの原因」となったものは現場となる発生場所に存在している必要があります。
がんという病気は正常細胞から最初のがん細胞に変わってから細胞分裂を繰り返して増殖し、症状が現れるようになるまでに20年近く掛かかります。そのためがんが発症する「およそ20年前に最初のがん細胞が生まれた時点」においてがんの原因が存在していたのか否かが重要であって、すでに発症している「現時点」において存在しているか否かは重要ではありません。
タバコやアスベストの場合は喫煙歴やアスベストを使用した建物での滞在履歴などを遡れば「いつ最初のがん細胞が生まれたか?」の特定はさほど難しくありません。しかしピロリ菌の場合は「胃がんになった現在」の有無がわかるだけで、最初の胃がん細胞が生まれた20年前の状況はわかっていません。前述のように、ピロリ菌が増殖したから胃がんになったのか、それとも胃がんが進行して胃酸の分泌が少なくなったのでピロリ菌が増殖しやすくなったのか、どちらが先なのかわかっていないのが現状です。
放射線の場合は原爆や放射線事故による被爆したという特殊なケース、そして空気中のラドンによって発生した肺がんを除き、一般的に生活している人たちの身体の中に放射線の発生源がどのように侵入して最初のがん細胞を生み出すのかがこれまでわかっていませんでした。
しかし本ホームページの胃がん・大腸がんの解説ページで解説したようにもしラドンから生じたポロニウムが水に溶けて飲食物に付着するならば話は変わってきます。

ご飯粒に付着したポロニウムからのα線
ラドン222から生じたポロニウム218が胃がんの原因に、ポロニウム218の後に生じるポロニウム214やラドン220由来のビスマス212およびポロニウム212が大腸がんの原因に、そして半減期22.2年の鉛210の後に生じる半減期138日のポロニウム210は全てのがんの原因になりえるのです。
条件③:「がんの原因」の摂取量とがん発生率の増加量が比例していること
第3の条件は直感的にも経験的にもわかりやすい条件だと思います。
DNAが損傷を受けた時、それが修復されて回復するか、そのまま細胞ごと死滅するか、突然変異を起こして異変を察知した免役に駆除されるか、突然変異が見た目に現れないため免役に引っ掛かることなく増殖して周囲の正常細胞の生存を脅かしていくか、の道筋はそれぞれ確率によって決まってしまいます。
そのため「がんの原因」の数が増えれば増えるほどDNAの損傷個所の個数は増えていき、自然と「1個目のがん細胞が発生し、それが増殖してしまう確率」も増加していきます。
タバコならば吸う本数が少ない人に比べてたくさん吸う人の方が肺がんになりやすいでしょうし、アスベストや放射線に関してもがん発生率との具体的な相関関係を示した研究結果がいくつも見られます。
ところがピロリ菌の場合は、胃がんが発症した時に「胃の中にピロリ菌がいたかいかなかったか」を調べた研究はいくつも見られましたが、ピロリ菌の数と胃がんの発生確率の相関関係を示した研究データは見られませんでした。
これらのことからタバコやアスベスト、放射線は条件を満たしている、それに対してピロリ菌は条件を満たしていない、と私たちは判断します。
条件④:「がんの原因」が体内に入る経路と量がわかっていること
第4の条件は第2の条件に付随するものです。
どんな病気でも身体の外から「病気の原因」がどのような経路を辿り、どれくらいの量が入ってくるのかがわからければ、それが原因だと断定することはできません。
がんに関しても同様であり、タバコやアスベスト、そして空気中のラドンならば呼吸によって口から喉、気管、気管支、肺の順番に入っていき、タバコの煙やアスベストは肺の入り口部分の肺門部でほとんど付着し、他の物質と化学反応しないラドンは肺の奥の方の肺野部まで届いてそこでα線を出せば肺の細胞を被曝させる、というふうに侵入経路がハッキリしており、その量もきちんと測定すれば判明します。
ラドンから生じるポロニウムが飲食物に付着する場合も口から食道を通って胃、小腸、大腸という道筋を辿りながら次々と崩壊していき、最後に半減期の長いポロニウム210が血流に乗って身体中に行き渡ってポロニウムを蓄積しやすい臓器に集中していきます。
しかしピロリ菌の場合は、人から人へと感染する時に唾液を通じて感染することが知られていますが、もしピロリ菌=胃がんの原因ならば欧米諸国のに人々に比べて唾液を交わすような粘膜的接触が多いわけではない日本人が、欧米人よりもはるかに胃がんよる死者が多い(特に日本人の胃がん死者数はアメリカ人の胃がん死者数の約20倍)という事実と矛盾が生じてしまいます。

また今でも時々「日本人のがん増加の原因は生活習慣の欧米化によるもの」と主張する方が見られますが、その仮説は明らかに誤りであると断言できます。
まとめ



